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大阪地方裁判所 平成4年(ワ)4475号 判決

原告

西村里織

被告

岡部寛

ほか三名

主文

一  被告窪谷義男は原告に対し、金二三六八万二四七三円及びこれに対する平成二年六月五日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告の被告岡部寛、同野崎常和、同株式会社エスラインギフに対する各請求、被告窪谷義男に対するその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用のうち、原告と被告岡部寛、同野崎常和、同株式会社エスラインギフとの間に生じたものは原告の負担とし、原告と被告窪谷義男との間に生じたものはこれを九分し、その七を同被告の負担とし、その余を原告の負担とする。

四  この判決は第一項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由

第一原告の請求

被告らは連帯して原告に対し、金三〇六一万三八二〇円及びこれに対する平成二年六月五日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、被告窪谷が梅田交通株式会社の保有するタクシー(以下「本件タクシー」という。)を運転中、先行していた被告岡部が運転する自動二輪車(以下「岡部車」という。)に追突し、岡部車を対向車線側に転倒させ、岡部車が、対向してきた株式会社エスラインギフ(以下「被告エスラインギフ」という。)の保有で、被告野崎が運転する大型貨物自動車(以下「エスラインギフ車」という。)と衝突し、岡部車に同乗していた原告が負傷した事故について、原告が、被告窪谷、同野崎に対して民法七〇九条に基づき、被告エスラインギフに対して民法七一五条、自賠法三条に基づきそれぞれ損害賠償を請求したものである。

一  争いのない事実

1  交通事故の発生

日時 平成二年六月五日午前〇時一五分ころ

場所 大阪府高槻市野田一丁目一七番一二号先路上

態様 被告窪谷が本件タクシーを運転中、先行していた被告岡部が運転する岡部車に追突し、岡部車を対向車線側に転倒させ、岡部車が、対向してきた被告野崎が運転するエスラインギフ車と衝突し、岡部車に同乗していた原告が負傷した(以上につき、被告窪谷を除く当事者間に争いがない。)。

2  エスラインギフ車の保有関係等

被告エスラインギフは、エスラインギフ車の保有者であり、被告野崎は、被告エスラインギフの従業員で、本件事故は、その業務中に発生した(原告と被告野崎、同エスラインギフとの間で争いがない。)。

3  損害の填補

原告は、本件事故に関し、自賠責保険から七六七万九〇一一円の支払を受けた(弁論の全趣旨。原告と被告岡部との間に争いがない。)。

二  争点

1  被告岡部、同野崎の民法七〇九条における過失の有無、被告エスラインギフの民法七一五条に基づく責任の有無、自賠法三条但書による免責の可否(原告は、本件事故発生について、被告岡部には、漫然とセンターライン付近を走行して本件タクシーに追突され、右追突後も、ハンドルを左に切る等の危険回避のための適切な措置を取らなかつた過失があり、被告野崎には、センターライン沿いを走行しながら前方注視を怠つた過失があると主張する。これに対して、被告岡部は、自己の無過失を主張し、また、被告野崎、同エスラインギフは、本件事故当時、通常どおりに走行していた被告野崎が、反対車線から飛び込んできたものを予測し、避ける義務はなく、エスラインギフ車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたとして自賠法三条但書による免責を主張するとともに、民法七一五条に基づく責任がないと主張する。)

2  原告の損害額(治療費、付添費、入院雑費、交通費、将来の治療費、休業損害、逸失利益、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、弁護士費用)

第三争点に対する判断

一  証拠(甲一、二、三の1ないし3、四、五の1、2、六、七、一七、丙一、二、検丙一の1ないし3、丁一ないし六、証人西村由起江、被告岡部、同野崎各本人)によれば、以下の事実が認められる。

1  本件事故状況

(一) 本件事故現場は、別紙図面のとおり、東西に伸びるセンターライン(幅約〇・九一メートルの中央帯となつている。)のある片側二車線(両側四車線)の道路である。本件事故現場付近は、アスフアルト舗装され、東側へ一〇〇分の四の上り勾配となつており、制限速度は、時速五〇キロメートルである。本件事故当時、本件事故現場付近は、小雨よりやや強い程度の雨が降つていた。

(二) 本件事故当時、被告窪谷は、本件タクシーを運転して本件道路の東行車線を進行し、本件事故現場の手前約四八メートルの別紙図面〈1〉地点(以下、別紙図面上の位置は、同図面記載の記号のみで表示する。)に差しかかつた。そして、本件タクシーが、〈1〉地点から約四二・一メートル先の〈2〉地点まで進行したところで、被告窪谷は、進路前方約四・二メートルの〈ア〉地点を先行する岡部車を発見し、急ブレーキをかけたが、〈2〉地点から約五・九メートル先の〈3〉地点まで進行したところで、本件タクシーの右前部が、〈イ〉地点(〈ア〉地点から約一・八メートル先の地点)まで進行していた岡部車の後部に追突した。右追突後、本件タクシーは、〈3〉地点から約四二メートル離れた〈4〉地点に停止した。

(三) 被告岡部は、岡部車の後部座席に、友人である原告を同乗させ、本件道路の東行車線の北側車線(歩道寄りの車線)を走行していたが、本件事故現場の約五〇メートル先の本件道路南沿いにある、いわゆるラブホテル(別紙図面の「ホテルキタグニ」)に入るため、本件事故現場の約二〇〇メートル手前から東行車線のセンターライン寄りの車線に車線変更し、時速五〇ないし六〇キロメートルの速度で走行していた。そして、被告岡部は、センターライン寄りの車線に車線変更してから約二〇〇メートル走行している間に、ラブホテルに入るため、岡部車のアクセルをゆるめ、時速四〇ないし五〇キロメートルに減速して〈イ〉地点を走行していた際、本件タクシーに追突された。右追突直後、被告岡部は岡部車のハンドル操作をする間もなく、被告岡部、原告、岡部車が、対向車線側に飛ばされ、路面に落下する以前に、対向してきたエスラインギフ車(最大積載量一三トンのトレーラートラツク)の右前部と衝突し、被告岡部、原告、岡部車は、本件道路の東行車線上にそれぞれ転倒した。

(四) 被告野崎は、本件事故当時、時速四〇ないし五〇キロメートルの速度でエスラインギフ車を運転して本件道路の西行車線のセンターライン寄り車線を走行していた。その際、エスラインギフ車は、前照灯を下向きに照射し、ワイパーを作動させていた。そして、エスラインギフ車が本件事故現場の手前に差しかかつた際、エスラインギフ車のフロントガラスが割れたので、被告野崎は、ブレーキをかけて停止し、降車して確認した結果、原告と被告岡部が本件道路上に倒れているのを発見した。本件事故によつて、エスラインギフ車には、運転席(地上からの高さ一七七センチメートルから一八五センチメートルの間)に凹損痕、フロントガラス破損、右フエンダーミラー曲がり、トレーラー部(右前から二九〇センチメートル、地上からの高さ一六〇センチメートルから一八二センチメートルの間)に払拭痕をそれぞれ生じた。本件事故当時、エスラインギフ車には、構造上の欠陥又は機能の障害がなかつた。

2  原告の受傷及び治療経過等

原告は、本件事故当日、大阪府三島救命救急センターで治療を受け、頭部外傷Ⅲ型、外傷性クモ膜下出血、脳梁出血、急性硬膜下血腫、右鎖骨骨折、右上腕骨骨折の傷病名で、平成二年六月二一日まで右センターに入院して保存的治療を受けた。その結果、意識レベルも徐々に改善され、右同日、理学診療科病院に転院して入院した。原告は、右転院後も、遷延性意識障害が持続し、気管切開も行われた。その後、意識レベルが徐々に上昇するとともに、一般状態も改善したが、右上下肢麻痺、左動眼神経麻痺、精神障害(記銘力障害)が残り、リハビリを主体とした治療を継続した結果、平成三年三月三一日に軽快退院した。原告は、右退院後、同年九月三〇日までの間、理学診療科病院に通院(実日数一二八日)して、リハビリを中心とする治療を受けた。また、原告は、同年四月一〇日から同年八月二三日まで、左動眼神経麻痺、左結膜下出血の傷病名で、高槻病院に通院(実日数八日)して経過観察による治療を受けた。そして、理学診療科病院の医師は、原告の傷害が、平成三年九月三〇日に症状固定した旨の後遺障害診断書を作成した。右診断書における原告の傷病名は、頭部外傷後遺症(脳挫傷)、遷延性意識障害、右片麻痺、左動眼神経麻痺、右鎖骨骨折、右上腕骨内顆骨折術後である。そして、右症状固定日と診断された当時における原告の障害のうち、精神障害に関しては、記銘力の低下、学習能力の低下がみられ、とくに、視覚による記銘力の低下が認められ、右上下肢麻痺に関しては、右手が筋力の低下とともに振戦が強く、右手の巧緻性が低下し、日常生活動作は左手に頼り、右手の握力低下がみられ、軽度の右片麻痺歩行がみられ、左動眼神経麻痺に関しては、左瞳孔が散大し、対光反射は認めず、眼位は外側に向いており、複視を訴え、視力は左眼で低下し、調節力の低下が認められ、左眼に流涙が多く、視力は右〇・八(矯正一・二)、左〇・六(矯正一・二)であり、右鎖骨骨折及び右胸鎖関節骨折に関しては、骨折に対して手術は施行されておらず、外見上は右肩が下がる非対称な変形が認められ、頸部症候群の症状に関しては、肩こり、頸部痛、背部痛を訴え、とくに前屈位で僧帽筋の痛みが強く、気管切開後に関しては、約三センチメートルの創痕が前頸部に残り、嗄声や喀痰の喀出困難な状態があり、症候性けいれんの疑いに関しては、受傷直後の病態や脳波所見及び頭部CT所見から、予防的に抗けいれん剤の投与を継続中であり、その他にも、右上腕骨内顆骨折術後、右肘部を中心に、長さ一四センチメートル、幅一センチメートルの創痕が残り、左肘関節部、左前腕部にそれぞれ創痕が残つている。

二  前記一1(本件事故状況)で認定したところによれば、本件事故は、被告窪谷が前方を十分注視しないで本件タクシーを運転したため、進路前方のセンターライン沿いを制限速度程度、あるいはこれよりやや低い速度で先行していた岡部車の発見が遅れて、岡部車に追突したもので、被告岡部がセンターライン沿いを走行していた点も、被告岡部が右側道路沿いにある施設に右折進入するためであつたから、正当な理由があつたと解されるので、右追突事故は、被告窪谷の一方的過失によつて発生したというべきである(被告岡部本人尋問の結果によれば、本件事故前、被告岡部がウイスキーかブランデーのカクテルを二杯飲んでいたことが認められるが、右に認定した本件事故直前の岡部車の走行状況、追突事故発生状況からすると、右飲酒が本件事故発生に影響を与えたとは解されない。)。また、右認定事実によれば、被告岡部は、本件タクシーから追突された後、岡部車を対向車線に進出しないようにハンドル操作をすることは不可能であつたと解されるので、対向車線に進出したことを被告岡部の過失と評価するのは相当でない。

また、右に認定した本件事故当時のエスラインギフ車の速度、進路のほか、エスラインギフ車の前記各損傷等が地上からかなり高い個所に生じていることからすると、エスラインギフ車は、制限速度程度、あるいはこれよりやや低い速度で自車線内を走行中、対向車線上で発生した追突事故のはずみでエスラインギフ車の進路前方直前に飛び出してきた被告岡部、原告が、地上に落下する前にエスラインギフ車と衝突したもので、本件事故当時、エスラインギフ車を運転していた被告野崎が、ハンドル、ブレーキの操作で被告岡部、原告との衝突を避けることは不可能であつたと解される。

そうすると、本件事故発生について、被告窪谷に民法七〇九条の過失があることは明らかであるものの、被告岡部、同野崎には過失がなく、また、被告エスラインギフには民法七一五条に基づく責任はなく、自賠法三条但書に基づく免責の主張は理由がある。

三  損害

1  治療費 八一万八二〇三円(請求二〇九万六一八一円)

本件事故による原告の治療費のうち、本件事故当日から症状固定日であると解する平成三年九月三〇日までの間における原告の本人負担分は、八一万八二〇三円である(甲九の1、2、証人西村由起江)。そうすると、治療費に関する原告の請求は、八一万八二〇三円の限度で理由がある。

2  付添費 六万円(請求一三六万九五〇〇円)

原告が前記一2(原告の受傷及び治療経過等)で認定した入院中、原告の母親あるいは原告の姉が毎日原告に付添つていた(甲一七、証人西村由起江)が、右入院中に付添看護を要したことを認めるに足りる証拠がないから、右入院中の付添費(請求一三〇万九五〇〇円)に関する原告の主張は理由がない。

さらに、理学診療科病院を退院後、原告は、平成三年四月中に右病院へ二四日間通院し、右通院の際に、原告の母親あるいは原告の姉が付き添つていた(甲九の1、証人西村由起江)。右事実に、右に認定した原告の症状、治療経過からすると、通院付添費に関する原告の請求(六万円)は理由がある(通院一日当たり二五〇〇円の二四回分)。

3  入院雑費 三九万一三〇〇円(請求四四万八六五九円)

前記一2(原告の受傷及び治療経過等)で認定した原告の症状、入院期間(平成二年六月五日から平成三年三月三一日までの三〇一日間)からすると、入院雑費としては、三九万一三〇〇円(一日当たり一三〇〇円の三〇一日分)が相当である。

4  交通費 一万四三二〇円(請求同額)

原告の症状固定日までの通院交通費として一万四三二〇円を要した(甲一〇の11ないし14、証人西村由起江)。そうすると、交通費に関する原告の請求は理由がある。

5  将来の治療費 九三万九〇一七円(請求三〇六万四二〇〇円)

前記一2(原告の受傷及び治療経過等)で認定したところによれば、原告については、受傷直後の病態や脳波所見及び頭部CT所見から、右症状固定日当時、予防的に抗けいれん剤の投与を継続中であり、右治療に一カ月当たり五九五〇円(甲一二の1、2の合計額一万一九〇〇円を二で割つたもの)を要し、将来も二〇年間(中間利息の控除として、二一年間の新ホフマン係数一四・一〇三八から一年間の新ホフマン係数〇・九五二三を控除した一三・一五一五を適用)の限度で右治療の必要性が認められるが、右二〇年間を越える治療の必要性を認めるに足りる証拠はない。さらに、原告について、眼科治療、鍼治療の必要性を認めるに足りる証拠はない。そうすると、将来の治療費としては、九三万九〇一七円(右五九五〇円の一二カ月分である七一四〇〇円に右新ホフマン係数を適用したもの。円未満切り捨て、以下同じ。)となる。

6  休業損害 二四〇万四五三九円(請求二四〇万四七四一円)

原告は、平成元年四月ころから本件事故当時まで、株式会社西武百貨店高槻店(以下「西武高槻店」という。)に販売員(接客員)として勤務していた。原告は、平成二年三月から同年五月までの三カ月間に四四万一五八五円(九〇日で割つた一日当たりの金額は四九〇六円)の給与を支給されていたが、本件事故当日から平成三年七月一五日まで西武高槻店を欠勤し、その間の給与を支給されなかつた。また、原告は、平成三年七月一六日から西武高槻店に復職したが、その後も通院のため勤務先を欠勤し、これらのことから、賞与については、平成二年一二月分につき一九万三六〇九円減額され、平成三年七月分につき二二万四〇〇〇円全額の支給を受けられなかつた(甲七、一五、一七、証人西村由起江)。そうすると、休業損害は、給与分一九八万六九三〇円(右四九〇六円に原告主張の休業期間四〇五日間を適用したもの)、賞与分四一万七六〇九円(右一九万三六〇九円と二二万四〇〇〇円との合計額)を合計した二四〇万四五三九円となる。

7  逸失利益 一六三三万四一〇五円(請求一八四六万五二三〇円)

原告は、昭和四四年二月二〇日生まれ(本件事故当時二一歳)である。原告は、前記復職後、本件事故以前の販売員としての仕事が前記症状のため困難であつたことから、売り場の裏でワープロ入力の仕事に従事していた。その後、平成五年四月ころからは、レジ係の補助として働いている。原告は、本件事故により、右手が自由に使えなくなつたことから、ワープロ入力、レジの仕事も左手を主に使用していた。本件事故後の原告の勤務振りについて、人事担当者からは一応の評価は得ているが、実際上は、右勤務先の配慮で勤務を継続している状態である。また、原告は、前記症状固定日後に支給された平成三年一二月分、平成四年七月分の各賞与はいずれも減額支給され、給与も、平成四年夏まで減額支給されており、平成四年夏以降は、給与及び賞与について減額支給されていないが、昇給はしていない。原告にとつて、今後も西武高槻店に勤務できるか否か明確でなく、原告が西武高槻店を辞めて他の仕事をするのは、実際上困難である(甲一五、一七、証人西村由起江)。

ところで、逸失利益の算定における労働能力喪失の程度は、後遺障害の内容、程度、障害の今後の見通しのみならず、被害者の職業、仕事内容、転職の可能性等を総合考慮して決定すべきであるところ、右認定事実によれば、原告には、前記一2(原告の受傷及び治療経過等)で認定した後遺障害が残存しているものの、勤務先の配慮によつて、仕事内容を変更してもらい、原告自身の努力もあつて、本件事故前の勤務先での勤務を継続しており、給与及び賞与についても、平成四年夏以降は減額支給されていないが、右勤務先への勤務継続については不安があることからすると、原告の逸失利益の算定における労働能力喪失率については、右症状固定日から三年間(中間利息の控除として四年間の新ホフマン係数三・五六四三から一年間の新ホフマン係数〇・九五二三を控除した二・六一二を適用)は、西武高槻店に在職する蓋然性が高いと解されるので、一〇パーセントの労働能力を喪失し、その後六七歳までの四二年間(中間利息の控除として四六年間の新ホフマン係数二三・五三三七から四年間の新ホフマン係数三・五六四三を控除した一九・九六九四を適用)につき四五パーセントの労働能力を喪失したと解するのが相当である。そして、前記三6(休業損害)で認定した原告の西武高槻店における就労状況、給与額からすると、原告は、右症状固定日から六七歳までの間に、原告主張の年間一七六万六三四〇円の収入を得る高度の蓋然性があると解される。

そうすると、本件事故と相当因果関係のある逸失利益は、二二歳から二五歳までが四六万一三六八円(前記年収一七六万六三四〇円に前記新ホフマン係数二・六一二と一〇パーセントの労働能力喪失率を適用)、それ以後の六七歳までが一五八七万二七三七円(前記年収一七六万六三四〇円に前記新ホフマン係数一九・九六九四と四五パーセントの労働能力喪失率を適用)となる(合計一六三三万四一〇五円)。

8  入通院慰謝料 二九七万円(請求三〇〇万円)

前記一2(原告の受傷及び治療経過等)で認定した原告の症状、治療経過、その他一切の事情を考慮すれば、入通院慰謝料としては、二九七万円が相当である。

9  後遺障害慰謝料 六五〇万円(請求同額)

前記一2(原告の受傷及び治療経過等)で認定した原告の症状固定日当時の症状、前記三7(逸失利益)の判示内容、その他一切の事情を考慮すれば、後遺障害慰謝料としては、六五〇万円が相当である。

10  弁護士費用 九三万円(請求同額)

原告の請求額、前記認容額、その他本件訴訟に現れた一切の事情を考慮すると、弁護士費用としては、九三万円が相当である。

四  以上によれば、原告の被告窪谷に対する請求は、二三六八万二四七三円(前記三1ないし10の損害合計額三一三六万一四八四円から前記損害填補額七六七万九〇一一円を控除したもの)とこれに対する本件交通事故発生の日である平成二年六月五日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、原告のその余の被告らに対する請求はいずれも理由がない。

(裁判官 安原清蔵)

別紙

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